亀田総合病院の見学の報告
大学病院をのぞけば、日本一の規模を誇る亀田総合病院の
見学に行ってきました。その時の報告です。
病院経営に行き詰まりを感じている方や、
もっとよりよいサービスを提供したいと思いつつも、
どう取り組んでよいか迷ってらっしゃる方の参考になれば幸いです。
亀田総合病院といえば、その斬新な取り組みが評判で、
カンブリア宮殿にもとりあげられたことがあります。
また、千葉の田舎にあるにもかかわらず都心から
2時間かけて受診する方もいるそうです。
*東京から直行バスが10本以上/日 運行しています。
今回は株式会社マザーリーフの榊原陽子さんと、
東海ストラテジックマネジメントの大谷さんと
行ってきました。
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榊原さんの書籍です。
東京医科歯科大学大学院にて医療経営などを
学ばれている方たちとともに見学をさせていただきました。
亀田総合病院理事 亀田隆明先生も特別にお時間を作ってくださり、
医療経営や今後の展望について、お話をいただけました。
質疑応答の時間もいただき、
本当は研修医の研修システム、ナースのキャリアパスなどについても
お話をお伺いしたかったのですが、今回は聞けませんでした。
そのためこの報告はおもに施設のハード面の紹介と
私なりの解釈を入れたものになります。
時々テレビや書籍などで取り上げらる霊安室です。
13階にあり、「天国に一番近い場所に霊安室を設置したかった」という
亀田先生の患者に対する心構えを感じられる場所です。
*多くの病院では霊安室は地下にある。
ご遺族が希望されれば、霊柩車のお迎えがあるまでの間、
こちらに安置されます。
関わったドクターやナースも線香をあげられるそうです。
景色はオーシャンビューでとてもよい景観なのですが、
やはり厳かな雰囲気がよいと望まれるご遺族もいらっしゃるため、
(写真では見にくいですが)手動で、窓を閉鎖して
暗くすることも可能なようです。
患者様、ご遺族のニーズに合わせた細かい配慮を感じました。
同じく13階にある展望レストランより。
ドクターヘリのヘリポートが見えます。
騒音への配慮のためか、ヘリポートは道の向こう側に
ありました。
13階の展望レストランの入り口にて撮影。
見学者の方々と一緒に、ランチをいただきました。
病院の中にロイヤルホストがある。
そんな感じのランチメニューでした。
ちなみに、社員食堂のラーメン職員に評判で
かなりおいしいそうです。
食べたかった・・・
病室に設置されているパソコンです。
入院患者さんは、ここで自身の検査データや電子カルテを
見ることができます。
(癌の告知を家族が望まない場合などをのぞく)
また、ドクターの紹介ページもあり、
専門分野だけでなく、出身、趣味なども知ることができ、
ドクターに少しでも話しかけやすくなるよう、といった配慮が
されています。
こちらで食事のメニューを選ぶこともでき、
食事制限がなければ、ステーキを病室で食べることも
可能だそうです。
もちろん、糖尿病などで食事制限がある方のパソコンでは、
おいしいメニューが表示されないようになっています。
また別途料金が必要ですが、ホテルのコンシュルジュサービスと
同じサービスがあり、
入院していて必要なものがあれば、パソコンで注文し、
代理で購入してきてもらえるそうです。
(DVDのレンタルもしてきてくれる!)
余談ですが、院内にあるローソンは千葉県のローソンのうち
売上2位だとか。
病院を受診した際、消化器外科はどこへ行ったらいいのか・・・
案内を見ても迷うことがあると思います。
亀田では、廊下に番号が書いてあり、
受診したい科が何番かを案内板で見ておけば、
簡単にたどり着くことができます。
アートインホスピタル。
私の子供にこの写真を見せましたが、
遊べるところと勘違いしたのか、「行きたーい」とのこと。
他にも、各階ごとにテーマが決まっていて、
(1階は“海”など)
様々なアートが置かれていました。
そして、ひとつ扉をくぐると・・・・
(下の写真が、その扉)
絨毯張りの廊下ではなく、いわゆる病院っぽい廊下です。
医療スタッフと患者さんは異なる導線を通ることに
なっています。
ホテルのような空間に、白衣を来た人、カルテを持った人、
検体、輸血用の血液をもったコメディカルの人、
あわてて走るドクター・・・・
そういった方ができる限りいないように、
通る道がわけられているのです。
確か、ディズニーランドにも職員用の地下通路があるようですね。
ちなみに、ドクターの当直室は私が勤めていた病院と
変わらないような大きさでした。
産科病棟の一室です。
普通お産の時は、オペ室に移動することが多いのですが、
この部屋ですべて完結するそうです。
写真の違いがわかりますでしょうか?
酸素やナースコールなど、お産の時や緊急の時以外は
必要ないものは扉で隠されています。
いざ出産の時になると、ベッドの足の部分が開くように
なっていて、お産の体制にはいります。
また、天井からライトがでてきて、お産に備えます。
ハイリスク妊娠をのぞき、正常分娩の方には、
入院中に、病院っぽさを感じさせない、という配慮です。
産科関連ですと、妊婦は退院したものの、
新生児がたとえば未熟児のため入院しているという
ケースもあります。
そのような場合、24時間WEBカメラで自宅にいながら、
我が子を見られるようになっているそうです。
この2枚は、スキルアップのためのルームの写真になります。
スキルアップのために24時間いつでも利用でき、
挿管、オペ、縫合、内視鏡・・・などの練習をすることができます。
見学してきたことは以上です。
以下、私の個人的な見解です。
1:どこからアイデアがでてくるのか?
細かい部分にまで配慮が行き届いているのですが、
いったいどこからアイデアがでてきているのか?
職員からも募集しているけれど、どちらかというと、
亀田先生のアイデアが多いようです。
アイデア発想法でいうと、
病院 X ホテルサービス
この公式をもとに発想されているのかな?と
感じました。
研修をしていて「よりよい医療・よりよい福祉を提供したい。」
という意見をよく聞きますが、
そのような漠然とした思考ではアイデアは生まれにくいと
考えます。
病院に他業界の常識を取り入れる。
そう考えて発想すると、アイデアはでてきます。
なぜならば、一から考えなくても、その業界(たとえばホテル)が
すでにやっていることを取り入れるだけだからです。
2:職員の満足度は?
公開されているデータによると、
2013年の看護師の離職率は新人で11.6%、
3、4年目で32.2%です。
決して低い数字ではありません。
毎年課題として研修などに取り組んでいるものの、
改善には至っていないようです。
離職率の低下=満足度が高い
とは言えないと思いますが、働く人の内面に関わる問題に関しては、
こらからなのかな?という印象を受けました。
(もちろん、働く人のスキルはトップレベルですが・・・)
取り組みとして
尊敬しあう職場風土の醸成の推進などもされているようですが、
具体的な計画としては、各部署に任されていているようです。
人への関わり方として、
having:給料をあげたり、物を与えたり、休暇を増やしたりする
doing:行動レベルで示す
being:あり方
havingが満たされただけでは、離職率を下げることは
できない。
個人的にはそう思っています。
組織作りに関して、チームビルディングや会議術を教えてくれた
私の師匠は、
「組織に何か問題が起こっている場合、そこには必ず対話不足がある」
と言っています。
議論でもなく、意見交換や情報交換でもなく、対話が必要です。
そのあたりのことに対して、
どのように問題としてとらえてらっしゃるのか?
今後の離職率の推移や論文などを参考に注目していきたいと
思っております。
杉浦
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